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「どこかいい場所」か、「他でもないここ」か クリエイターが地方に拠点をつくる理由

「どこかいい場所」か、「他でもないここ」か クリエイターが地方に拠点をつくる理由

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クリエイティブの世界で生きる人たちが、地方に拠点を設ける動きがある。その理由は果たして、コロナ後のリモートワークの浸透だけなのか。ウェブデザインの世界で20年以上トップランナーとして走り続けてきた株式会社シフトブレインの加藤琢磨さんと、数多くのアーティストたちのミュージックビデオ制作を手がけてきた株式会社イサイの脇坂侑希さんが、ともに拠点のある広島で対談。仕事、組織、そして地方拠点について語り合った。

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加藤琢磨さん/株式会社シフトブレイン代表取締役社長
1977年生まれ、長野県出身。千葉工大卒業。フリーランスでのウェブデザイナー・ディレクター活動を経て、2003年に株式会社シフトブレインを創業。コーポレートブランディングを中心に、コミュニケーションプランニング、デジタルデザインなどを手がける。世界的なWEBアワード「Awwwards」など、国内外で受賞多数。2017年にオランダ支店、2022年に広島県内にサテライトオフィスを開設。福岡市在住。

脇坂侑希さん/株式会社イサイ代表取締役社長
1991年生まれ、広島市出身。広島市立舟入高等学校を経て大阪芸術大学を卒業後、2015年に株式会社イサイを設立。数々の有名アーティストのミュージックビデオやTVCM、ドラマなど各種映像制作を手がける。2024年に広島市に開設した事業拠点は、カフェ「MOOD COFFEE & BAKE」を併設。東京都在住。

個人の創造性ありきで成長し、クオリティを上げていく

ー それぞれ、お互いの仕事についてどんな印象を持っていますか。

加藤琢磨さん(以下、加藤):イサイさんのことは以前、同業の人から聞き、おもしろい会社だなと思っていました。尖った集団であると同時に、映像だけではなく、広告やスタジオなど事業を幅広く展開されていますよね。クリエイティブとビジネスの両立はとても難しいので、バランス感がある人なのかな、と勝手に想像してました。

脇坂侑希さん(以下、脇坂):この対談のタイミングでちょうど音楽系のウェブ制作の依頼が来ており、加藤さんと一緒にやることになりました。加藤さんの会社とうちの会社、結構似てるんですよね。クリエイターの集団から始まり、今でもちゃんとクリエイターが自社の中に10人以上いるみたいな会社って珍しくて。

加藤:そうですね。映像業界とデジタル業界は多少違うとは思いますが、クリエイティブの会社って個人の創造性を一番の強みとする会社が多いですよね。それありきで成長してクオリティも上げていく。個性をひとつのチームにまとめていくのはおもしろくもあり、大変でもありますが。

「泳げていたらクリエイティブの世界には入っていなかったかも」と笑う脇坂さん

ー それぞれ、どんな経緯で今の仕事をするに至ったのですか。

脇坂:小学5年生の時、映画「ウォーターボーイズ」が好きすぎてずっと観ていたんです。夏休みにみんなでプールに集まってシンクロを練習してたのですが、僕だけ泳げなくて。でも僕だけが毎日映画を観て、みんなに教えていました。ある日、見飽きてふとメイキング映像を見たら「教える人がいるじゃないか」と。「こっちなら行けるぞ」と思ってから監督という概念を知り、いろんな映画のメイキングを見始めて、映像系に進める大学を受けました。もし泳げていたら、シンクロのコーチになっていましたね(笑)。

加藤:大学4年生の時にたまたま入った研究室の先輩に、Flashが出始めた当時一躍有名になったウェブデザイナー「IMAGE DIVE」の長藤寛和さんがいました。今では当たり前の、動きのあるサイトが出始めたころで、彼が残した作品にめちゃくちゃ感動し、ウェブの世界に興味を持ち始めました。

ウェブデザイン業界の成長著しい2000年代に創業した加藤さん

加藤:元々広告業界に進みたくて、地元の会社に就職する予定でしたが、これから盛り上がっていくウェブでの表現の世界にワクワクしたので、ウェブデザインの世界にフリーランスとして飛び込みました。たまたま、あるアワードで受賞したことをきっかけにメディアやクリエイターと繋がりができたので、会社を立ち上げました。

脇坂:僕の場合は、大学4年生の時「このまま普通に学生やってても将来映像でご飯食べれないな。とりあえず卒業までにちゃんとした映像を作らなければ」と、いろいろ模索したんです。ライブハウスに通ってミュージシャンに声をかけ、彼らのミュージックビデオをつくり始めたのが始まりでした。     

僕、飽き性なんですよ。ミュージックビデオは長編ほどの時間をかけずに思っていることを具現化できますし、アート性が強くても受け入れられる点が好きで。そこでハマっていきました。

自分の成長を諦め、おもしろいやつを集める

ー お二人ともクリエイティブ集団のトップ。どのように組織づくりを考えてきましたか。

加藤:今年で創業22年になりますが、現場にいたのが15年くらいですね。ここ7年ぐらいはプロデューサーや営業、経営に集中しています。自分がクリエイターの頃は全案件のクオリティチェックをしていましたが、そうすると自分の能力がそのまま会社の最大値になることに気づきました。このままでいいのか、自分よりすごいやつを雇ってその人たちで組織をつくっていった方がいいのか、悩んだ結果、自分が会社の成長のストッパーになっちゃうより、おもしろいやつらが集まる集団にしたいと思って。

脇坂:クリエイティブだけがうちの取り柄です。人を増やせば増やすほどクオリティが落ちていくので、グループ会社に分けて、各社色をつけてクオリティを守っています。 また、クリエイターが中にいることでプロデューサーや制作部たちもディレクション脳で動いているので、そこもうちの特徴かなと思います。     

加藤:30人以上の尖った集団ってなかなか難しいですね。脇坂さんが言うように、大きくなってくると強みやクオリティが落ちていくので、人数バランスはいつも悩みます。一番いい状態を維持しようとしても、気がつくと会社が大きくなってバランスを崩してしまいます。そういう意味でもカルチャーを維持するために会社を分けるのは必要なことだと思いますね。

クリエイティブ集団における経営者としての立ち位置が話題に

ー 複数のグループのどこかに身をおきながら、自らクリエイターとして生きるのですか。

脇坂:全部見てるけど、常に僕が一番いいものを作ろうとしてい ます。誰にも負けないです。

加藤:僕はクリエイターとしての道は諦めた側なんで(笑)、すごいなあと思います。社長自身のモチベーションやマインドが組織の核・エネルギーになるので、そこが折れないようにしないといけないと思いますね。

ー お二人とも地方に拠点を設けています。それぞれどんな理由なんですか。

加藤:おもしろいクリエイターが集まって、一番いいパフォーマンスを発揮するための環境づくりを考えての結果、広島県の江田島にたどりつきました。先ほどお話した「自分がクリエイティブのトップであるべきか」の考えに変化があったのが10年ちょっと前。その頃、海外案件が増えてきたこともあり「働き方の実験」として、スタッフ全員が2週間交代でロンドンで働く取り組みをしました。場所にとらわれずに働くことが、自由な発想につながるのではと考えていました。

その後、コロナ禍で会社がフルリモート体制に。フルリモートだからこそいろんなところで働けるわけだし、日本全国で働ける人を採用できるメリットがあるのに、東京にオフィスがあったら変わらないな、と。なので、いつでもどこでも自由に働ける会社を方針として立てました。海外から帰国して住む場所を探しているメンバーがいたそのタイミングで、広島県が企業誘致でおもしろい取り組みをしているのも知り、江田島に「えたじまサイト」を設けました。

弊社で作るもののほとんどはデジタルデータなので、業務自体はリモートでも問題ありません。インターネットがあれば全部完結しますし、出社するとむしろパフォーマンスが落ちるスタッフがいるほどです(笑)。でも、やっぱり人と人との信頼関係は会って体験しないと生まれない。江田島は、みんなが集まって考える拠点にもなってます。

シフトブレインは、穏やかな瀬戸内海に浮かぶ江田島に拠点を設置

えたじまサイトは、かつて保育園だった場所にオープンした。全国からスタッフが集まる

「地方か東京か」の対立構造を越えて

脇坂:加藤さんのお話、理解はすごくできます。でも僕は真逆。個性的な仲間を選んでは、この海賊船に乗せて、選んでは乗せて、出航していくやり方をしているんで、その点では真逆です。あと、映像って一人じゃ絶対つくれないんですよね。仲間と毎日喋りながらつくらないといけないっていうのが大前提なんで、リモートとは意外と対極にいます。

僕は2015年の設立当初から、広島でいつか事業をするって決めていました。父が食器の卸売業の3代目なんですが、会社を立ち上げた曽祖父は、僕が生まれてすぐ亡くなっているんです。原爆の後、みんなにご飯を食べさせるため、お皿を集めてきて配って、そこからお皿屋さんを始めた人らしく、そういう話を聞いて、いつか僕も広島に貢献したいなって。拠点をつくる計画を立てたんですがコロナで一度ストップし、落ちついたタイミングで再出発しました。

あと広島の街並みが好きで。昔からよく行っていた、市内を一望する公園があるんですが、今でも帰省したら立ち寄ります。景色を見にいくというよりは、そのときの自分に会いに行くというか。匂いで思い出すところがある。「やるぞ!」ってなる。そういう場所ですね。

竜王公園から見た広島市街地。脇坂さんの原風景

加藤:自分の居場所みたいな話ですけど、今までは「地方か、東京か」っていう対立構造だったような気がします。それがコロナ禍以降、デジタルですべて繋がれるようになってから、「地方ー東京」ではなく、「地方ー東京ーインターネット圏」というように、居住地を特定しなくてもよくなったと思うんです。

今、自分はそういった、場所を特定しない人たちに魅力を感じています。東京だろうが、地方だろうが、場所に固執することなく、常にフットワーク軽くおもしろい人、イベントがある場所へ移動しているような移住国民みたいなのが標準になればいいなぁと思っています。

最終更新日:

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